3Dプリンターで作るバイク部品
3Dプリンターが普及し樹脂部品をローコストで作れるようになった。
汎用部品と3Dプリント品を組み合わせてバイクの部品を製作したので、開発概要を記す。
3Dプリント品は製作は主に外装部品に限られるだろう。
万が一、その部品が壊れた時に重大な事故に繋がらないかは網羅的に検討する。
ASILの安全要求の考え方を元に、検討を進めた。
例えば、今回のメーターブラケットで最も問題となるのが以下のケースだ。
・メーターブラケットが破損し、メーター、キーシリンダーが脱落
メーターの脱落→速度、灯火、ギアポジション視認機能が機能しなくなる。
このケースは直に事故につながることはない。しかし脱落したまま走り続けると、キーシリンダーの配線切断などでエンジンが停止するおそれがある。
ブラケット脱落から車両を安全に停止することには問題ないとして、制作を進めた。
制作したブラケットがこちら。
フレームとの接続部分には、汎用のL字アングルを使用している。
また、メーターのクランプ部分にはゴムシートを挟む
今後の展望
シリコン樹脂とエポキシ樹脂
インサートナットを汎用品で代用する
ベースプレートと板の接続部分の雌ねじは、このような専用品が使われる。
これを使ってスノーボードを作るのがまず間違いない。
ただ、自分は入手性のよさから溶接用のナットで代用している。
トラスコ中山 TRUSCO
TBW09-0006 [TRUSCO T型溶接ナット 2B M6 P無ダボ無 スチール 10個入]
https://www.yodobashi.com/product/100000001003986462/
注意点としては、ネジが貫通する構造となっているため、ビスが底付きしないように配慮する必要がある。
硬化後、ネジ穴に溜まったエポキシは十分注意して取り除くこと。最悪、ビスを締め込んだ際にソールを押してしまい変形、剥離の恐れがある。
また、ナットは鉄製で非常に錆びやすいため、滑走後は良く乾かす必要がある。
強度的には今の所問題はない。コアと接触する面積が少ないため、剥がれが気になるようであればFRPを挟むと良い。
資金に余裕のある方は専用品を使うのが間違いない。
自作板の補修と追加工によるフレックス調整
2019年に初めて自作した板はミドルフレックスを目指して設計したが、完成品は非常に柔かい板になってしまった。
原因はコアの加工ミスにあると考えている。
トリマーの操作ミスでコアに所々深い溝が入ってしまっていた。
また、コア自体の厚みも2−5mmとやや薄めである。
フレックスだけでなく、強度、耐久性の面でも問題があった。
滑走中、ビンディングのベースプレート接触部分を起点にクラックが入ってしまった。
今回はこの割れ補修をするとともに、グラスファイバーの層を一枚追加してフレックスの改善をはかる。
工程は基本的にグラスファイバーの積層手順をなぞるだけ。硬化している元の層に#400で軽く足付けした後、積層していく。
グラスファイバーの剥離部分には注射針でエポキシを注入した。
さらに和紙を合わせて積層しデザインを変えた。
工数はボード自作と比べ半分程度を要した。
まだこの板はゲレンデでは未滑走だが、今回行ったグラスファイバー層の接着が強度的に問題なければ、自作板の硬化後の後調整が可能になることになる。
現状、自分の知識ではコアの厚みや形状、グラスファイバーの量から完成時の板の特性を正確に予測できない。
追加工が可能になれば、初めはやや柔らかく板を設計しておき、完成後の乗り味から適宜グラスファイバーを追加するなどのリカバリーが可能になる。
サドルを張り替えたい
人間それぞれ顔形が異なるように、尻の形も千差万別である。
自転車乗りの方ならわかってくださるだろう。
自分の尻に合うサドルとの出会いがいかに困難か。
あなたのお尻の形が世界でただ一つであるように、私の尻の形もまたユニークだった。
何度も高価なサドルを購入してみては、その度に可愛いお尻が悲惨な目に遭う。長距離を走ってみてわかる相性。
あなたも僕の尻を受け入れてはくれなかったと嘆くのである。
サドルの性能は数値化できないし、また自分の尻の性質も数値化できない。
ただ試行錯誤し、無数のモデルから自分の運命のサドルを見つけるしかないのである。
汚い画だが、これはゴミではない。大学時代、自転車部だった頃から使っているサドルである。
このサドルとの出会いは衝撃的だった。引退した先輩から譲り受けたものだが、私の尻との相性は非常に良く、200キロ走った時も最後まで尻を優しく支えてくれた。
長い自転車生活を送るうち、サドルは私の尻に馴染んでいった。
また、私の尻も同様にサドルに馴染んでいったのである。
そんなサドルも使っていくうちに合皮が剥がれ、今はウレタンが剥き出しの無惨な有様である。
同じモデルへの交換も考えたが、このサドル、完成車の付属品であり同じものを再び手にいるのは難しい。
確か2005モデルのcannondale jeykyllに付属していたものだったと思う。刻印されているOEMと思しきメーカー名で検索してもヒットしない。
それでも、また長いサドル探しの旅に出るのは御免である。
交換するとして、一体何本のサドルにまたがれば、また運命の一本に巡り会えるのか。
なら、せめて延命処置を行い、朽ち果てる最後まで一緒に自転車人生を歩もうではないか。
まず、サドルの型を取る。
養生テープでサドルを覆う。テープにシワがあると布に移した時に正しく形状を移せないため、上からさらに綺麗に貼り付け伸びを抑える。
次に裁断する線を書く。別のサドルの裁断面を参考に、次のように引いた。
これをサドルの表皮に移す。縫い代部分を忘れずに。
表皮にはアルカンターラを使った。自動車のレースでステアリングやシート使われており、肌触りや質感、グリップ力が良い。
後にわかるが、この生地はマウンテンバイクのサドルに使うには全く適さなかった。
グリップ力がありすぎるため、オフロードの下りで、腰を引きサドルから外す→戻すの動作がスムーズに行えない。
合皮など他の生地を使った方が良い。
一度縫いつけ、サドルにフィットさせてみる。
概ねいいようだ。先端のRがきついため、この後さらに折り目をつけ縫いつけた、
裏側の縫い目はこのようになっている。
糸はミシン針で使える最も太い糸を使った。表皮が厚くがミシンのパワーが足りない場合は、ハンドルを力づくて回すことで一針ひとはり縫っていけると聞いたことがある。
また、アルカンターラは防水性はないため、本来なら下層は防水性を持つ何らかのシートを貼るべきだと思う。
バイクのシート張り替えの際の手順が参考になる。
今回は作業中に興奮しており防水シートの接着は忘れてしまった。
賢い人なら、まず手を止めて素材の持つ特性を考慮し、適切な方法を取ることができる。
いよいよ接着である。
接着剤はG17速乾を用いたが、これは完全に失敗だった。
表皮にテンションをかけてタッカーで打つ作業を繰り返すため、固定完了まで少しの時間がかかる。
タッカーを打っているうちに接着剤が半分以上乾いてしまった。
自分は作業中にいつも興奮している。まるで猿のように手を動かしているため、大抵思いつきで愚かなことをする。
賢い人なら一度手を止め、何が起こるか想像し、適切な道具を選ぶことができる。
再度クリップで仮止めし、表皮にテンションをかけながらタッカーで打っていく。
シートレールに隠れる部分はタッカーが入らず打てない。
製造時ははおそらくシートレールを曲げて縮め、サドルのベースに挿しているんだろう。
最終的にこのような仕上がりになった。
歪な縫い目が非常にチャーミング。
ミシン縫いで立体に縫うのは非常に楽しい。これを機にミシンともっと仲良くなりたい。
■使用感について
先に書いたが、表皮の素材選びを間違えた。サドルの上で大きく動くマウンテンバイクに置いてはシートにアルカンターラは使うべきでないと思う。オフ車かモタードでアルカンターラの生地を使ってるのを見たことがある気がするけど、アレってどうなんだろう…
逆にグリップは申し分ないので普段使いには問題ない。
妙なのが、以前と尻のフィッティングの感じが違っている。微妙に硬くなってしまった感じがある。
おそらく、表皮をタッカーで打つ際に過剰にテンションが掛かってしまったのではないかと思われる。
サドルは難しい。
■今後
・SDGのI-beam規格なら、シートレールの形状が簡単なので3Dプリンタで簡単に作れるのでは…?
・でも今はi-beam絶滅してそう。シートポストだけでも中古で確保したい。
・バイクのサドルも同じように張り替えてみたい。
・布と布の合わせ面の折り方を間違えていたっぽいので再挑戦したい。